学生時代、この人の皮膚の表面を撮った写真を美術館で見た。
その数年後、水戸芸の展示室に入ったら、人だかりの奥に白くて高い、男だか女だかもよくわからない生き物がゆっくりと蠢いていた。何だかよくわからないそれを、当時の私が夢中になって見た記憶を昨日のように覚えている。その後、何度もその人に遭う(みる)ために、劇場へ足を運ぶことになった。
大野さんと親しくなったのは、亡くなってからのことなんですよ、と語っていた若山美術館の館長、武田さんの言葉がしっくり入ってくる。
会場には、大野さんの言葉の断片やアルバムの写真、用務員時代の体験が元になった日常の糧の映像やパイプオルガンの音などが並んでいる。体育教師として女子校に赴任、女の子に何を教えたらいいかとダンスを始めた話、世界的アーティストでありながら退職後も用務員さんとして勤務し、毎年サンタになった大野さん。きっと毎日通う学校が楽しみになるでしょう。受け継がれたぬいぐるみも衣装も、エピソードの欠片の一つ一つがとてもやさしい。
学生時代の私をどこまでも引きつけた大野一雄さんの魅力は、優しさと繊細さが積み重なってできたものだったということが、今になってやっとわかったような、ここでしか見られない展覧会でした。
大野一雄「日常の糧」は12月8日、今週の土曜日まで。
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