奈良の宿舎を出て、ルンルンの気分で自転車で坂を降りる。
お土産に、ぷるんぷるんのわらび餅を買うのだ。
今朝できたての、ぷるんぷるんが手に入った。
その後、私は東大寺の入り口の駐輪場に自転車を止め、昼間の二月堂に向かった。
東大寺の入口ではたくさんの外国人たちが鹿と遊んでいた。
運慶快慶やっぱすごいなあとを山門をくぐったその時、はっと、自転車のかごの中に置き去りにしてしまったわらび餅を思い出した。
私は走った。
泣きそうになりながら、全力で走った。
自転車から離れて一分、いや長くても二分だろう。
どうか待ってて、私のぷるんぷるん。
しかし完全に自転車に近づく手前で、私は瞬時にその周辺の異変を察知した。
それは悪夢のような光景だった。
自転車の周囲には、今まで可愛らしく餌をねだっていた鹿たちが何かに群がり、何かをむさぼる姿。打って変わったような本能むきだしの行動に、嬉々としてカメラを向ける外国人観光客たちの姿が。
その何かが私のぷるんぷるんだと認めるのに、時間はかからなかった。
ひどいよ鹿
ほんとひどいよ鹿
私に落ち度はあったさ
でも2分後だよ2分後、たったの。
それをきっかけに、私の鹿評価はぐんと下がった。
その後すれ違う鹿々に、私は心の中で毒づいていた。
しかしこう考えたらどうだろうか
神様の遣いである鹿たちに、最高に美味しい和菓子を奉納したと。
外国人観光客には日本旅行の印象に残る、最高のネタを提供したと。
・・・いやそんなに素直になれるわけがない。
食べ物の恨みは恐いのだ。私のぷるんぷるんを返せ。
そして糞害に困っている東大寺の方、事故とはいえ私の失敗で餌を与えることになってしまってごめんなさい。
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