先日の毎日新聞のサブタイトルに“美術作家ら10年越し企画”と見て、そうか、もう吉和と関わって10年になるのかと驚いた。自分がプロジェクト中心になると、なかなか客観的に見ることは難しい。
ずっと個人プレー中心に続けて来た制作活動が、ありがたいことにいつのまにかこんなにメンバーが増え、それを束ねる器もない私はただ傍観しているようだった。でもある時点からなぜか、この人たちと一緒なら、きっと奇跡が起きるに違いない。と確信めいたものが湧いてきた。時間もお金も人も、この規模のプロジェクトではまったく足りないはずなのに。
当日の私は、舞台の様子はもちろん、場面転換や照明、音響効果などみんなの勇姿が見たくて、自分の化粧や衣装替えもそこそこに楽屋を走り出て、写真を撮ったり手拍子したり、すごい〜とお客さんに混じって忙しく見ていた。
吉和漁港の夜空に輝く星の光。
あの漁民アパートの隣の旧冷凍倉庫で、みんなの力でこんなにすごいことが本当に出来るなんて、私がいちばん信じられない。感謝しかない。
非公開の収録だったけど、吉和地域の方々にだけは、騒音等のご迷惑をおかけすることを想定してあらかじめ告知の回覧板を回した。3時間前から場所取りしていた方、リハから毎日見にきた方もいた。星劇団の成り立ちを描いた1部の芝居に出てくる役の「あの人知ってる!」とか、「歌と踊りの2部が楽しみじゃ」とか、いろんな声が聞こえてきた。うれしかったのは、劇場に使用した旧冷凍倉庫跡で、普段たき火を囲んで憩いの場にしている眼光鋭い漁師のおじさんが、本番の翌日に舞台の解体をする現場の私に近づいてきて、昨日はありがとう、と目を見てしみじみ言ってくれたこと。
星劇団の再演は終わったけれど、みんなで蒔いた種は今後どのように、成長していくのだろう。今回踊ってくれた吉和の子どもたちの心の中の種もゆっくりと成長しますように。
今後、記録映像の上映会は夏を予定しており、全ての関わってくれたみなさんと、そのプロセスを紹介する記録冊子を制作し発行する予定ですので、楽しみにお待ちください。