2016年7月31日日曜日

花火だった

花火大会の日は、いつも大変だった。

しんくんは花火の大きな音に怯え、外に向かって吠え続け、抱っこしようがなだめようが、花火が終わるまで自宅の奥のお風呂場にこもり続けた。
私が15の時に家に来て、気高い王子様、あるいはアイドルのようなしんくんが、歳をとってぼけたり、弱って来てからは、より愛しくてたまらなかった。


チイはその後、事情があってうちに来た。
先住者のしんのことが大好きで、迷惑そうにするしんくんを追いかけ回し、散歩に出ればハトを追いかけ回し、道ばたのものを何でも食べようとする、近所でも評判のおてんば娘だった。しんくんは後から来たこの娘を追うことはしなかったが、散歩に出るといつも心配そうな目でちゃんとついて来ているか、振り返って確認してた。

チイは私と気が合って、私が自室で仕事していると必ず呼びに来るし、早朝に部屋に来ては一緒のベッドで眠った。しんくんが19年目で亡くなったとき、チイがいてくれたから、ペットロスにならなかった。

チイは花火のことなんてへっちゃらで、大きな音がしようが平気でごはん食べたり、いつものようにうろうろしてた。
チイも15年生きて、5月に亡くなった。
病気一つせず、急に弱ってからはぽっくりと。

私のその場所は、いまだにぽっかりと穴があいたままだ。





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