久しぶりに、今年の制作のために尾道の高橋家に入った十日前。
1階の広縁に、床の色とほぼ同化した、枯草色のカマキリがいた。
姿勢は正しく、しかし微動だにしないので、息を吹きかけてみるが動かない。
もう死んでいるのだろうと、その死体をどうしようか持て余していたら、しばらくしてゆっくりと動き始めた。
私は、どうぞごゆっくりと声をかけて、二階へ上がった。
その後もしばらく、広縁のレースのカーテンに、へばりついていた。
掃除していたら、和室の畳に湿り気のある規則正しい白い物体があった。
小野さんに見てもらったら、カマキリの卵だと。
つまり彼女が死体のように動かなかったのは、出産直後のからだを癒していたかららしい。
その後何日かして、枯草色の彼女のからだはレースのカーテンの下に落ちていた。
昨日、その身体を竹林のところに埋めた。
私は卵を踏みつけないように、大切に保護している。
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