すこし昔に目にした言葉「プロ彼女」がいるように、
「プロ想像力」とか「プロ想像者」がいてもいいのではないか。
プロ想像者による想像力は、圧倒的なリアリティが付随し
それを何らかの手法によって描写できる(語れる)ことによって、
あらゆる筋の専門家とやり合うこともできるのではないか。
と思ったところで目が覚めた夜中の二時。
ちゃんと眠りたい。
風雲文庫のことを考えると、今でも少し、眠れなくなる。
そこは内部を螺旋に上る塔のような建物。
ところどころに掛かる、黒い札に白い文字で書かれた短い言葉。
一度園内に入ると、広い敷地を巡るように作られた細い通路からは、
出口も入口も、はっきりとは見えない。
はじめに駐車場の場所を聞くために、助手席の私は1人で園内に入ったが、
人が見つからず、受付がわからず、行けども行けども小道は行き止まりになり、
出口もわからずパニックを起こし、少し息を切らして小走りした。
影にすこし新しい建物を見つけると、奥に人の気配がして、白い割烹着を着た
感じのよい御婦人が現れた。
駐車場の位置を確認して再び園内に戻ると、御婦人が迎えに出てくださっていて、
先ほど迷い込んだ時には頑丈な錠前が掛かっていた、塔の門扉が開いていた。
その先のことは、簡単に言葉にはできない天空の城であり、秘密の場所だ。
あれは、現実の出来事だったのか。
きっと熱海に行くことがあれば、私は再び、あの風雲文庫を訪れてしまうに違いない。